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第8回 切り絵と切り紙文字 バックナンバーはこちら >>> 伊達得夫が絵心のある人だったことは、学生時代から知られていた。 ブックデザインにもその特技は発揮され、その特徴から一目で分かるのが切り絵作品である。長谷川龍生『パウロウの鶴』(1957年)の函ひらに飛ぶ鶴といい、島原健三『四季』(1954年)の表紙ひらにいる猫といい、なんとも味がある。 切り紙で作られた文字もいい。花田英三『あまだれのおとは…』(1954年)に水尾比呂志『汎神論』(1958年)、欧文では『ロートレアモン全集』(1957〜1958年)の函文字がそうだ。雑誌『ユリイカ』の表紙でも、真鍋博のカットとともに伊達の切り紙文字が使われたことがある。繊細な真鍋のイラストと、リノカット風の力強い伊達の文字が意外と合っている。 文字の配置がうまかったというのは、矢代静一『戯曲 蝙蝠』(1957年)の函を見ると感ずる。この文字は、伊達の娘さんである百合さんが小学生の時に書いた文字だそうだ。小学生がこの難しい字を書けたということも驚きだが、小学生の書いた文字でありながらこの配置に置かれると、なぜか格好良く映ってしまう。ひらには他に一切の文字も装飾もないから、ごまかしようがない。位置だけで勝負しているのである。 |
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バックナンバー
2005.09.18 第1回 ふたつの『ユリイカ』 2005.09.26 第2回 『ユリイカ』の表紙絵 2005.09.28 第3回 有名画家の展覧会 2005.10.02 第4回 洋書にしか見えないブックデザイン 2005.10.05 第5回 継ぎ表紙の妙技 2005.10.05 第6回 赤と黒 2005.10.05 第7回 鮮やかな配色 2005.10.16 第8回 切り絵と切り紙文字 2005.10.26 第9回 たれつきジャケット 2005.10.31 第10回 細い帯を斜めに掛ける 2005.10.31 第11回 覆い帙 2005.11.01 第12回 和風のブックデザイン 2005.11.04 第13回 渡辺藤一の世界 2005.11.04 第14回 増刷と異装 2005.11.05 第15回 全集と双書のデザイン 2005.11.06 第16回 判型の効果
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