このところ怒濤の買取りラッシュ。しかも長年の蔵書を一括でお譲り
いただくケースが多くうれしい悲鳴です。
　日頃おつき合いさせていただいているK先生からお呼びがかかり、
自宅の書庫へ通う日々。庭に本のために建てられた二階建ての一軒家が
あって、そこから本を運び出す。家具はまったくなく本棚が幾重にも立
ちはだかっている。蔵書量は火星の庭の全在庫より多いだろう。その
数分の一をお譲りいただくことになった。
　K先生は大学の教授職を10数年前に辞されて、今はご自分の研究を
まとめて本を執筆されている。
　「はい。」「はい。」と本棚から引き抜かれた本の束を手渡しで受け
取り、車の荷台に積んでいく。受け取るのは本なのだけど、なんとい
うか、K先生がこの本と過ごしてきた時間も一緒に渡されているような
気がする。先生は教職のほかに、たくさんの活動や人との交流、海外へ
の旅をされていてこれだけの本をいつお読みになったのだろうと思い、
「先生は本をいつ読んでいたのですか」と聞くと「歩きながら」との答
え。授業と授業の間、廊下を歩くときも本を手放さず、一秒も無駄にし
ないで読書へ充てたという。
　洋書の画集を手にして、イタリアの美術館で原画を観たときの感動を
語ってくれた。それを語るK先生の顔には押し付けがましいところがな
くて、好きで好きでしょうがなく、それを人がどう思うかはあまり気に
しないという風だ。何かのための読書、ではなく読書そのものが最高の
快楽であるよう。「もうたっぷり楽しんだからいいんですよ。あとは次
の人に楽しんでもらえば」と笑顔で言った。古本屋としてはとてもあり
がたい。だけど私だったらできるかな、とも思った。
　我が家は当然、K先生の書庫より狭い。リビングは本で埋まりご飯も
食べられない。今や寝室まで本でいっぱいになってきた。6回目の買取
りに伺ったその足で、向かったのは広瀬川沿いのあるところ。天気もい
いし、ここで本の整理をすることにした。
　　
　秋の陽射しの下、お店にすぐ出すもの、ネットに載せるもの、ブロ
カントギャルリーsendai向け、市場に出品するものに分けていく。
散歩する人に「何やってんのっしゃ？（何してるの？）」と聞かれたり。
当店でお願いしているダスキンの営業の方とばったり会ったり。どうや
らここはご近所、タクシーの運転手、営業の方々の和みスポットのよう
です。1時間ほどで終了。気晴らししながら仕事がはかどりました。
K先生の美術書のコレクションは素晴らしいものです。できるだけ早く
棚に並べられるようがんばります。
　
　古本屋も本は買う方が好き。でも売れないと哀しい。